F1のブレーキ性能ってどれくらいすごい?一般車との比較と構造解説!
F1のブレーキ性能ってどれくらいすごいのかな?構造とかもよく分からないからまとめて教えてほしいな!
F1ではブレーキを温めるっていう言葉も出てくるけど、温度との関りも分かりづらいよね!まとめて解説していくよ!
あなたは、F1のブレーキ性能ってどれくらいすごいと思いますか?すごいことは分かるけど実際にはどれくらいの性能なのか、想像しにくいと思います。
今回はブレーキの構造であったり、どうしてブレーキに熱が入らないといけないのかなど、根本的なところまで解説していきます。
ブレーキはサーキットをより速く走れるようになるための重要な部分です。理解が深まればF1がより楽しくなりますので、ぜひ最後まで読んでいってください!
目次
F1のブレーキ性能ってどれくらいすごい?
時速300㎞以上のスピードにもなるF1マシンですが、速度がしっかり落ちるまでにどれくらいかかるのでしょうか?ここでは、1秒間に減速する量と減速Gについて解説していきます!
1秒当たりの減速量と制動距離
F1マシンのブレーキは、1秒間に時速95㎞前後の減速が可能です。市販車では1秒間に時速30㎞前後の減速のようですので、F1マシンのブレーキ性能の高さがよく分かります。
例を挙げると、F1イタリアGPの開催地であるモンツァサーキットでは、最終コーナー(パラボリカ)への侵入は時速313㎞で、ブレーキを1.22秒踏んで、72mの間に時速204㎞まで減速しているというデータも出ています。
比較しづらいかもしれないけど、一般車の制動距離は、時速60㎞から完全停止まで44m必要だよ!
ただ、この減速はブレーキの性能のみで行われているわけではなく、空気抵抗、地面とタイヤとの摩擦などの総合力によって行われています。
F1マシンは高速で走るほどダウンフォースが増えます。その際に車体が地面に押し付けられるため、タイヤと地面の摩擦が増え、減速がしやすくなります。
ダウンフォースって何だっけと思った方は別の記事も見てみてください!
よって高速で走っていればいるほど、1秒間に減速できる量が増えます。「時速300㎞→時速200㎞」、「時速200㎞→時速100㎞」、「時速100㎞→停止」の三段階で比べると、「時速300㎞→時速200㎞」の減速が一番速く行えます。
減速G
減速Gとは、ブレーキをかけた時に車体にかかる力のことで、この値が大きいほど強いブレーキがかかっているということを意味します。
F1マシンと一般車のフルブレーキング時の減速Gを比較すると以下のようになっています。
一般車のフルブレーキング:約0.8G
F1マシンのフルブレーキング:約4~4.5G
減速Gだけで見てもF1マシンは一般車の5~6倍の強いブレーキがかかっており、ブレーキ性能の凄さが分かると思います。
これくらいしっかり減速できるブレーキがないと、高速で走るF1マシンは危なくてレースどころではないということです。
F1のブレーキ性能を発揮する構造はどんなもの?
市販車と比べてもすごい性能のF1のブレーキですが、何が市販車のブレーキとの性能差を生み出しているのでしょうか?このパートでは、その構造や材質などを解説していきます!
ブレーキの構造
F1マシンのブレーキの構造は、実は市販車とほとんど変わりません。それはディスクブレーキと呼ばれるものです。
タイヤと一緒に回転するブレーキディスクと呼ばれる円盤を、ブレーキパッドと呼ばれるもので左右から挟み込むようにして、ブレーキディスクとブレーキパッドの摩擦によって減速と停止を行います。上の写真でいうと、レコードのような構造体がブレーキディスクで、右上の構造体がブレーキパッドです。(正確には右上の構造体はキャリパーというもので、その中にブレーキパッドが入っています。)
※イメージ図です。この図では片側のパッドしか表していませんが、ディスクを挟んで左右に同じような構造体があって、ブレーキを踏むと左右から挟み込むようにディスクにパッドが押し当てられるイメージです。
要は、ブレーキペダルを踏むと、ブレーキパッドがブレーキディスクに押し当てられて摩擦で回転が止まる=ブレーキがかかるってことだね!
車のブレーキは摩擦を利用して減速するため、ブレーキを使用するたびに運動エネルギーが摩擦による熱エネルギーに変換され、高温の摩擦熱が発生します。よって、ブレーキの材質は、高温の摩擦熱が発生しても壊れないものでなければいけません。
ブレーキの材質
では、高温の摩擦熱に耐えられる材質ってどんなものでしょうか?
市販車のブレーキディスクやブレーキパッドにはセラミック製や金属製がありますが、F1のブレーキディスクやブレーキパッドはカーボン製です。これらの材質であれば、どの材質でも耐熱性に優れており、耐久性も高いです。
ブレーキパッドと聞くと、スポンジのようなものや化粧のパフのようなものを想像しがちだけど、それでは熱に耐えられないんだね!
ただ、カーボン製は他の材質に比べて摩擦係数が高いため、F1マシンのブレーキの方が、市販車のブレーキより車体を止めやすいブレーキとなっています。
その他にもカーボン製は重量が軽く、車体重量の増加に市販車ほど影響しないので、燃費やブレーキ性能の向上にも役立っています。
ベンチレーションホール
F1のブレーキはレース中1000℃以上にもなることがあるため、冷却のための空気の通り穴が設けられています。
これをベンチレーションホールと言い、市販車にも設けられていますが、F1のブレーキには市販車とは比べ物にならないくらいの量のベンチレーションホールがあいていて、冷却能力も抜群です!
次のパートで解説するけど、熱を帯びすぎるとブレーキが効きにくくなるんだよ!
数で言うと、市販車のブレーキは大きな穴が数十個程度ですが、F1では小さな丸い穴が最大で1400個ほどもあいています!
上の写真でいうところの、ディスクの側面に何個もある長方形の穴のことだね!穴が大きくて数が少ないから、この写真のブレーキは市販車のものだね!
F1で使用するブレーキはベンチレーションホールの数が異なる数種類のブレーキが用意されていて、チームは天候や気温などに合った放熱効率のブレーキディスクを選ぶことができます。
具体的には、2018年のレースに供給されていたブレーキのベンチレーションホールは、900個、1200個、1400個の3種類あったそうです。
穴がたくさんあいている方が、ブレーキが空気に触れる表面積が大きくなって、冷却効率が良くなるんだよ!
F1のブレーキ性能には熱が重要?!
ここまでで、メインで解説していたわけではありませんが、ブレーキは熱の処理が関わってくることが何となくわかったと思います。F1観戦していても、ブレーキの熱の話がよく出てきます。このパートではブレーキと熱の関係について解説したいと思います!
熱を帯びるとブレーキ性能が上がる?
F1のレースを見ていると、ドライバーとスタッフとの会話で「ブレーキの温度が上がらない」ということを聞くことがあります。なぜブレーキの温度が上がらないことが問題なのでしょうか?
その理由は、ブレーキが熱を帯びないと効きが悪くなるからです!
ブレーキディスクやブレーキパッドは熱を帯びると表面が変形し、ざらざらした状態となります。表面がざらざらになると摩擦係数が上がるため、ブレーキの効率が良くなり、ビタっと止まることができます。
逆に適度な熱を持っていないと、摩擦係数が上がらず、ブレーキが効きにくくなってしまいます。そのため、F1ドライバーはレース開始前の段階で、しっかりブレーキに熱が入るように作業しています。
ちなみに、市販車のブレーキの作動温度域は100~300℃程度ですが、F1は1000℃を超えても作動するようにできています。
F1マシンのブレーキは、市販車と違って効きやすいだけじゃなくて、かなりの高温でもしっかり働いてくれるんだね!
熱を持ち過ぎるとブレーキ性能が落ちる?
熱を持たないと摩擦係数が上がらずブレーキの効きが悪くなると解説しましたが、熱を持ち過ぎてもブレーキが効きにくくなります。
熱を帯びすぎて効きが悪くなる理由はブレーキのシステムにあります。
ブレーキはブレーキペダルを踏むと油がブレーキのキャリパーに送り込まれて、その圧力によってブレーキパッドがブレーキディスクに押し付けられて減速します。
ブレーキが働くには油の圧力が重要なんだね!
その油が、加熱しすぎたブレーキによって温められると、沸騰のような状況になり、油内に気泡ができてしまします。
気泡ができると、気泡によって油の圧力が分散されてしまい、十分な圧力をキャリパーに届けられなくなります。そのため、ブレーキパッドをブレーキディスクに押し当てる力が弱くなり、ブレーキを強く踏んだとしても効きが悪くなります。
この他にも、温度が上がりすぎることでフェード現象が関係してきたりもするよ!フェード現象の詳しい解説は別の機会にするね!
F1のブレーキ性能についてまとめ!
ここまでで簡単ではありますが、ブレーキの構造やシステム、減速量など、F1のブレーキ性能について解説してきました。
・F1のブレーキは1秒間に時速95㎞前後の減速を可能にする(市販車の約3倍)
・減速Gはフルブレーキングで市販車の約5~6倍かかる
・F1のブレーキの材質は耐熱性・耐久性に優れた摩擦係数の高いカーボン製
・ブレーキは熱を帯びると摩擦係数が高くなり、減速しやすくなる
・熱の帯びすぎも油圧系に影響が出てブレーキが効きにくくなる
F1のブレーキの凄さとシステムについてよく分かったよ!熱の処理がとても重要なんだね!
そうだね、F1を観ていると、ブレーキの熱の話が頻繁に出てくる理由がよく分かるね!
ブレーキの理解を深めて、よりF1観戦を楽しみましょう!